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正しく考えるというのは難しい

日本型フェミニズムの正体 『不惑のフェミニズム』

不惑のフェミニズム (岩波現代文庫)

不惑のフェミニズム (岩波現代文庫)

  
本書は、著者が1980年代から今に至るまでに一般向けに書いた記事を集めた、戦いの記録である。男女平等後進国・日本を救済してやろうというアメリカの態度に不快感を示し、あるいは、そのアメリカの言うことを素直に認める日本人も不快だと言い、アグネス・チャンが子連れで仕事にやってきたことを擁護し、最近ではBL図書排除に反発するなど、様々な活動が記録されている。

育休法、均等法改正(セクハラ対策)、共同参画法などが成立した90年代を成果の時代とし、ジェンダー関連の講演会中止事件などが生じた2000年代をバックラッシュの時代としてまとめている。もう少し大きな視点からは、平塚らいてうの『青鞜』の活動期を第一波フェミニズム、そして1970年ウーマンリブから始まる自らの活動期を第二波フェミニズムとして位置づける。その第二波が現在40歳を迎えるに至った、というのが書名の趣旨だ。

それにしても、この書名に使われている「不惑」は、男尊女卑で有名な儒教の本に出てくる言葉だ。なぜこんな言葉を使ったのか。堕落したのではないか。儒教の軍門に下ったのだ。今後は儒教的フェミニズムが展開されていくことになるだろう。あるいは、「儒教=男尊女卑」という理解が皮相なのかもしれない。儒教自体にフェミニズム的な側面があるということなら興味深いことだ。いずれにせよ、今後に期待したい。

ともかく、日本には儒教が一応根づいている。とすれば、日本のフェミニズムは、欧米のと比べて、儒教的色彩を持っていてもおかしくない。本書は、日本のフェミニズムに儒教的な面があることを示すものなのかもしれない。

ところで、もともと日本に男尊女卑思想はなかったという話もある。ヒミコなど昔の日本には女性のトップも多く、男尊女卑になったのは、中国の影響だというものだ。開国後に西洋先進国の思想を取り込んだように、中国が先進国だったころには、日本はその先進国の男尊女卑思想を取り入れたということなのだろう。現在は、フェミニズムという西洋先進国の思想を日本に定着させる試みが行われている。今、中国はどんどん力をつけている。今後、中国が大国となりアメリカを凌駕したなら、日本は再び先進国中国の男尊女卑思想を輸入し始めることになるだろう。