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正しく考えるというのは難しい

日本で成果給はムリ 『タテ社会の人間関係』

 

 

タテ社会の人間関係 (講談社現代新書 105)

タテ社会の人間関係 (講談社現代新書 105)

 

 

本書は社会人類学的に日本の人間関係の在り方を特徴づけ、それをタテ社会と呼ぶ。

 

第一に、タテ移動はできるが、ヨコとのつながりはない。ある会社に入ったら、平社員から出世して重役、社長にもなれたりする。しかし、別の会社に移る転職はない。ヨコ移動はできない。労働組合にしても会社の枠を超えた連携はよそよそしい。対して、インドは違う。カーストは横に広がっている。同じカーストなら初対面でも仲間として付き合えるが、異なるカースト間の交流はない。全く無視。

 

第二に、序列がある。この序列の基準は、年齢や年期であって、実力ではない。これを無視して、実力があるからと新入りなのに重役に取り立てたりすると、反発が起きる。出る杭は打たれる。

 

第三に、同じ序列内では平等が志向される。同じ序列に属しているのに、扱いに差があると、反発が生まれる。同期生意識が強く、同期の誰かが出世すると俺も俺もというようになる。同期組はあまり差をつけず出世させる。誰かが課長になったら、課長代理、補佐と続いていく。そもそも実力差を表だって認めない。やればできるの世の中である。

 

このように成り立っている秩序を乱すと人間関係がきしみだし、組織は機能しなくなる。しかし、格の違いを見せつければ反発はやむ。圧倒的な実力差であったり、家柄の違いであったり。「あそことうちは格が違いますのや」ということになれば、やっかみなどは生じない。出過ぎた杭は打たれない。

 

食品工場で働いてる者が製品に毒を入れたという。理由に、後輩が自分より給料をもらっていたということを挙げていたようだ。これが、不当な扱いを受けていると感じたり、犯罪を犯す動機となったりするのは、実力よりも先輩後輩という形で序列が形成されているからだ。

 

中途半端な実績差で違いを出す成果給は、序列差や序列内平等を乱す。日本では組織が機能しなくなる。格がちがうと受け取られるだけの圧倒的な実績差でしか違いを出さない成果給にしなければならない。