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ynkby's blog

正しく考えるというのは難しい

なぜ日本ではえらくなる程無能になるのか 『アーロン収容所』

 

 

 

 

筆者は、戦時に兵隊にとられ、ビルマで敗戦を迎え、戦勝国イギリスの管理の下、ビルマラングーン地区アーロン日本降伏軍人収容所での生活にいそしんだ。強制労働と泥棒の日々であった。泥棒したのは、食料の改善要求をしたら、家畜飼料としては完全なものであるといわれたりしたからだ。とにかく食料は足らなかった。

捕虜生活で遭遇したイギリス人、インド人、ビルマ人、日本人の関わり合いが描かれる。イギリス人は、支配者であり、当然一番上に君臨している。インド人とビルマ人は、同じイギリスの植民地支配を受けている立場だが、仲が悪い。植民地政策でそう仕向けられたのだろうか。一方、一時はイギリスを蹴散らした日本人に対しては、一定の尊敬のまなざしを向けていたりする。

特に、ビルマ人に関する記述が多い。ビルマ人の対日感情は総じて悪くない。日本軍から略奪の被害を受けた人は恨んでいたようだが、大概のビルマ人はこっそり煙草をくれたりしていた。インド人やネパールのグルカ兵との仲が悪いが、日本人に対しては、敗戦以降もとにかく好意的であったという。それどころか、日本軍人に感化されたビルマ人もいて、泥棒ばかりする日本兵に楠公の精神をこんこんと説かれたこともあるという。

また、ビルマ人には、仏教の無常感が根付いていて、イギリスによる支配も日本の敗戦も、ちょっと引いた目線で見ていたりする。そして、全然執念深くない。財産を根こそぎ取られた者も登場するが、物欲がないのか、仕返ししようという感じではなくにこにこしている。

そして、ビルマ人は子供がよく働く。年を取ればとるほど何もしなくなるし、できなくなる。大人のビルマ人は使い物にならない。計算ができなくなって、商売ができない。子が働くのは、大人が子供を働かせて搾取しているというのではなく、大人になると無能になるという、ビルマ人の知的肉体的面からのものではないかと筆者は考える。

昨今、チャイナプラスワンとか言われて、ミャンマーは注目されていて、ミャンマー情報の価値は上がっているかもしれない。70年前の情報がミャンマー・ビジネスを考えている人の役に立つのかはともかく、筆者のビルマ人の印象はこんな感じである。

ところで、子供が働き親は何もしないというが、子供が働くことが自然な流れで、特に悪意とかいったものがみられないとすると、むしろこれは文化だ。テレビなんかで、途上国の小さな子供が、学校も行かずに農園で働いていたりするドキュメンタリがあったりして、かわいそうとか言ったりしているが、結構、一方的で安直すぎる捉え方をしているのかもしれない。

ちなみに、日本にも、これと同種の文化が根付いている。日本も上に行くと何もしなくなる。日本では、えらい人には、何もさせず、雑事はすべて部下がこなすという文化がある。上司と出張したら、切符の手配からお茶の用意から何から何まで部下が手とり足とり準備したりする。こうして上司はどんどん無能になっていく。日本のルーツの一部は南部アジアにあるわけだが、日本のこの現象は、日本のビルマ的南部アジアDNAの表出なのである。

上司は何もせず部下がすべて準備するとか、強烈な上下関係を描くと、それは儒教的伝統といわれたりするかもしれない。というか、自由主義とか個人主義と合わない日本の伝統はよく儒教残滓としてかたずけられる。しかし、ちょっと安直にすぎる。

儒教は古くからあって、日本で一世を風靡したこともあるけれど、今ではすたれてしまった。今でも残っているように見えるものがあるかもしれない。しかし、それは日本にもともとあったものと符合しているからである。日本のものと合致しているからすたれないのである。それは体裁が儒教なだけで、中身は日本なのである。儒教残滓ではなく、日本である。