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ynkby's blog

正しく考えるというのは難しい

狼男とは 『月の魔力』

 

月の魔力

月の魔力

 

 

月神話というものは、単純ではない。

月の女神は美しく恵みの神であると同時に、狂暴な神でもあった。ダイアナとかルナとかアルテミスとかは、純潔で豊穣の神様なのだが、同じ月の神ヘカテーは、魔女である。

月が狂気を引き起こすというのは、経験的に知られてきた。本書は、月と凶悪犯罪という経験的に語られてきた話を、より科学的に関係あるよ、と言おうとする。

潮の満ち引きが月の引力の影響であることはよく知られているが、人間も体内は水であり潮の満ち干と同様に影響を受ける。こういう人間の捉え方をするのが、バイオタイド理論である。

月の人体への影響には、引力から直接に生じるものと、月の引力が電磁場に影響を与え、その電磁場から身体に生じる間接的なもののがあるが、こうした影響によって、体内の水の動きが鈍くなるなどし、イライラを生じたりする。満月の日に凶暴化しやすくなる所以である。

もちろん、満月の人体への影響は、人によって異なる。満月を見て、むしろ心が落ち着くという人もいる。が、一方で、イライラする方向に出る人もいる。凶暴化したりするのは、この手の人である。

話は17世紀にさかのぼる。この時期のヨーロッパでは、精神病者は病院や監獄に閉じ込められていた。精神異常とは、人間が動物的レベルに落ちた状態と理解されていた。精神病者も、月の影響を受ける。躁鬱病者は、満月と新月の夜に狂った行動を頻繁にとった。さらには、その時期には代謝が活発になり、ひげなんかよく伸びた。獣化というに充分であった。

話は原始時代にさかのぼる。温暖な時代には森で果実を食って暮らしていた原始人も、氷河時代が始まると、狩りをして生きていかざるを得なくなった。その時、競争相手となり、または狩りのお手本となったのが、狼であった。狼は、月に吠え、狩りをする。狼と月の関係は明らかだった。

こうして狼は信仰の対象となり、上手に狩りができることを願ってか、狼になる儀式なんかができたりした。しかし、氷河時代が終わると、ヨーロッパでは人間が家畜なんかを飼い始めた。狼は家畜を襲うただの害獣になった。狼になる儀式に、ポジティブな意味はなくなった。むしろ、狼になる儀式は、自分は人様に害を与えるいけない存在であるということを晒すための罰となった。狼の悪魔化である。

狼男は、月による狂という側面にスポットを当てた月神話の一種であり、ヘカテーのグループに属する。狼と月という原始からの記憶、狼は害獣であり忌まわしいものだというヨーロッパの歴史、そして、精神病者を、獣的な状態に落ちているものと見做し、月の影響を受けた心身の変化を観察した結果から構成された。