中国では、猪年ではなく豚年である。
十二支の本家は中国だから、日本に伝わってから猪に変化したのだろう。
なぜ日本では猪なのか。
それは日本に豚がいなかったから。
今の日本の豚は、文明開化後に欧州から来たものだ。
実は日本にも豚はいたらしい。弥生期の豚の骨が見つかっている。しかし、弥生後期にはいなくなってしまっていたようだ。
農業が発達していき人口が増えていった一方、豚なき世界になった日本では人糞が注目されることになった。豚がいれば人糞は豚が食うことになる。豚なき世界では人糞は処理されず、溜まっていくことになる。そこで一大技術革新が起こった。人糞肥料だ。人糞を肥料に利用するのは、結構、日本独自のものらしい。これは長年日本で続いたエコサイクルである。
こうして大宜都比賣神話ができた。大宜都比賣は、おいしい料理を作ってもてなす、おもてなしの女神だ。大宜都比賣神話とは、大宜都比賣が、須佐之男をおもてなししようと、鼻と口と尻からおいしい食べ物を出して料理していたら、穢いと殺されてしまい、その死体から五穀が生えてきた、というものだ。殺された死体から五穀が生じるこの神話は、ハイヌウェレ型神話として類型化されている。ハイヌウェレとはインドネシアの神様で、これも殺されて食物が生まれる。しかし、大宜都比賣のように、尻から食べ物が出てくるのは、日本独自のものだという。人糞肥料文化の賜物だ。
大宜都比賣は、おいしい料理を作ってもてなす、おもてなしの女神だ。技術革新、エコ、和食、おもてなし。どこから見ても、大宜都比賣こそクールジャパンの女神にふさわしい。