ynkby's blog

正しく考えるというのは難しい

なぜ日本は日露戦争後ダメになったのか 『幕末史』

 

幕末史 ちくま新書

幕末史 ちくま新書

 

 攘夷とは何か。

幕末期、攘夷というタームは様々な意味で使われたという。
排外行動。つまり外国人を切り捨てたりするもの。そして、条約改正。当時、条約改正というタームはなかった。破約攘夷と言うらしい。これには戦争も辞さず、という強固派もいれば、戦争は避けるべしという穏健派まですべて含まれた。さらには、意識高揚運動。孝明天皇が攘夷を願って神社にお参りに行ったりしたが、このお参りも攘夷であった。

ということで、ひと口に攘夷というくくりでは、大雑把すぎる。天皇は条約改正を求めたが戦争は避けるべしという穏健派だった。戦争して排撃せよという人たちと区別して理解しないと、当時の政治的な対立状況がちゃんと把握できない。

この基本的理解をもとに、幕末から明治を、不平等条約を結ばざるを得なかったという屈辱からはじまり、西洋列強と伍していくために挙国一致体制の確立を目指す物語として描く。目的は、条約改正。

挙国一致体制を確立すべしというのは、長州も薩摩も幕府も同じだった。しかし、その中身をどのようなものにするかは人それぞれ異なり、最終的に、幕府の下に集まるでもなく、朝廷の下に集まるでもなく、新しい政府をつくることになったらしい。そして、新政府の下、廃藩置県して、中央集権体制を作り上げ、条約改正に向け、文明開化に突き進んでいくことになった。

とすると、日本は日露戦争が終わったら突然ダメになった、のだとしたら、日露戦争後に条約改正が達成され、幕末の屈辱以来の、挙国一致の日本の目的が達成されてしまったからに違いない。以降、日本は、目的がなくなり漂流し出した。挙国一致もなくなり、セクショナリズムでバラバラになって迷走し崩壊した。

そして崩壊後、再び屈辱から始まった戦後も、先進国としての地位を得て目的を失い、漂流を始め、再び崩壊し、そしてまた屈辱から始まることになる。日本は屈辱に依存している。屈辱を晴らすと崩壊する。屈辱とともに生きる。