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正しく考えるというのは難しい

パラサイトはどっちが悪いのか 『大国主の神話』

 

大国主の神話 出雲神話と弥生時代の祭り

大国主の神話 出雲神話と弥生時代の祭り

 

 本書は、大国主神少彦名神の謎に迫る。大国主とは、出雲の神様で、天孫が降りてくるまで、この国を治めていた神様。少彦名とは、穀物の神様で、大冝津比賣の死体から生えた五穀から神産巣日神がその種を作った時、その指の間からポロッと落ちた神様。

大国主は、地上を統治し、少彦名とコンビを組んで、農業はじめ国作りにまい進したのだが、もともと大国主はすこぶる弱いダメ神様だった。大国主の神話の半分は、か弱い大国主が、地上を統治するまでになる成長物語である。

大国主は、女神様にはすこぶるモテた。だから兄神たちに嫉妬され2度も殺された。殺されるたびに、母神の刺国若比賣が手を尽くし、生き返ることになる。2度殺されて生き返ると、母神は、もう殺されないようにと、紀国に大国主を逃がし、さらに、須佐之男がいる根の国に逃げることになった。そこで須佐之男の試練に耐え、成長し、須佐之男から地上を統治せよと言われるにいたる。地上に帰った大国主は、2度まで殺された兄神たちをいとも簡単にやっつけてしまった。

日本の文化的にポイントなのは、刺国若比賣であるらしい。2度も殺されてしまい、もう自分ではどうしようもない、大国主の成長に寄与できないと悟るや、紀国にやってしまった。これを機に大国主は成長し立派になったのだ。

西洋では全く違う。ユングの母殺しに象徴されるように、西洋では、母を殺して子は自立し、大人になる。殺さなければ、永遠に少年のままだ。しかし、大国主は母を殺さず成長した。日本に、母殺しという残酷なものはない。母が子を他所にやる。子離れして子を成長させる文化であるようだ。

西洋も日本も、子が成長するには母から離れないといけないというのはいっしょだ。成長しなければならないなら、両者がいっしょにいるのはよくない。パラサイトとかは、よくないことになるが、日本においては、おそらく子離れしない親の方が悪いにちがいない。