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ynkby's blog

正しく考えるというのは難しい

基礎研究は何の役に立つのかという人に創造性はない 『TLOとライセンス・アソシエイト』

TLOとライセンス・アソシエイト―新産業創生のキーマンたち

TLOとライセンス・アソシエイト―新産業創生のキーマンたち

 

本書は、TLOが日本にできる過程を追っていく。TLOとは、技術移転機関(Technology Licensing Organization)のことだ。技術移転とは、大学の技術・研究成果を特許化して、企業とライセンス契約を結び、その企業に研究成果を使わせることだ。技術移転の父ライマースがスタンフォードで技術移転を進めていく話と、リクルート出身の山本貴史が、ライマースから助言をもらいつつ、東大TLO(CASTI)の社長になって技術移転を進めていくぞという話がメインだ。

 

技術移転の仕方として、スタンフォードのマーケティングモデルと、カリフォルニア工科大のマーケットプルが挙げられている。前者が大学の技術がまずあってそれを産業界に持っていくのに対して、後者は産業界のニーズに合わせて適切な研究者を紹介する。山本は、後者は難しいとして前者をとっている。研究者が振り回される可能性がより低いだろうという点で賛成だ。

 

昨今、産学連携の声が大きくなり、そのための法律も色々できている。大学は社会の役に立ってないからもっと社会に役立て!とかいわれる。しかし、そんなことばかりいってプレッシャーをかけると、研究者が研究しにくくなるだろう。特に基礎研究とか。もともと、その研究は何の役に立つんだ?とかよく言われてきているのにだ。

 

研究者自身が、自分のやってる研究がどのように社会生活の役に立つかなど考える必要はなかろう。学問のための学問で十分だ。だいたい研究それ自体が十分困難なものなのだから、余計なことに煩わされない方がいい。もちろんそういうことを考えたいなら考えたらいいけど。

 

TLOは、学問のための学問を保証するためにあるのだ。学問のための学問をする人と、大学にある知をどう社会に役立たせるかを考える人との、分業体制の確立なのだ。

 

そもそも、この研究は何の役に立つのか?といういうことを本気で言う人には創造力なんか無いんじゃないのか。人がゴミだと思っているものを、こう使えばこういう役に立つぞということを考え出したりするのが創造力だろう。どう役立たせられるかを考えるべきで、何の役にたつねんという態度は創造性とは無縁のものだ。恥じ入るべきである。