花火の火花

正しく考えるというのは難しい

I'll Cry Instead ベースソロ

 最初はただの捨て曲だった。しかし、テンポの早い短い曲で、間奏もなくどんどん展開していって終わるという、駆け抜ける疾走感みたいなのが何回か聞いてるうちに好きになった。その疾走感に一役買っているのがタンバリンだと思うのだが、実は、パーカッションが目立つ曲は出来の悪い曲で、出来の悪さをカバーするためにパーカッションを使っているのだという印象があって、人気のないこの曲でタンバリンが活躍しているのは、やはりそういうことだとの思いを強くする。
 聞きどころといえば、やはりベースソロ。というほど長くはないが、ベースとタンバリンの2つだけが鳴っている箇所だ。シャッフルのリズムが活きている。ポールといえばドライビングベースだが、それは、このリズムのときに奏でられる。この曲では、ドライビングベースといえるまでのことはしていないが、このベースソロの部分はそう言えるし、それ以上のことをしているといえる。
 ベースソロといえば、次のアルバムのWhat You Are Doingの終りの部分でも、それっぽいことをやっているが、その曲でもごく短い。The WhoのMy Generationのベースソロより短い。ポールの革新的ベースは歌より目立ってたりするが、ベースソロは弾かない。ジョージのギターソロは、間奏としてのギターソロで、ギターメインの曲にはしない。同様に、ポールもベースメインの曲にはしない。ベースだから普通じゃないので目立っているし、出すぎていることもあるかもしれないが、あくまで歌の裏を奏でているのであって、リンゴがドラムソロをしないのと同じように、ポールもベースソロはしないのだ。

Anytime At All 最初のクリシェ

 B面の始まりの曲。ドラムのバン!で始まりサビに入る。A面と同じく、始まりの曲には、出だしのインパクトのある曲をもってきたようだ。A面の曲の方は永遠に語り継がれるジャーンの響き。こちらは語り継がれてはいないが、こんな始まり方はそうそうないと思うし、相応のインパクトだと思う。そして、リンゴは、やはりこの曲ではこのバン!のフレーズを使い続ける。最後も、締めのギターと被って目立たなくなっているが、バン!で締めている。ワンフレーズドラムをこの曲でも実践している。加えて言えば、締めのギターも、ジャーンジャーンと変な鳴らし方をしていて、そうそうない終わり方をしている。始まりも終わりもそうそうない。
 A面の一曲目との関係でいえば、ポールが高音部を歌っているのも共通だ。A面のとは違ってワンフレーズだけだが。こちらもジョンが歌うには高すぎたのだろう。そして、Tell me Whyのように裏声を使うような場面でもなかったのだろう。
 もう一つ共通点は、ピアノだろうか。A面の曲では間奏でギターと同じフレーズが鳴っていた。この曲の間奏でも、ギターとピアノが並走している。といってもギターはコードをジャカジャカ無らしてるだけで、メロディーを奏でているのはピアノなので、ピアノがなければ間奏は成立しない。また、ピアノは間奏だけでなく、Aメロでも重要な役割を果たしている。ノリのいい曲でありながらもAメロでは少々郷愁を感じる作りになっていて、ピアノの下降音がそれを引き出す重要な役割を果たしている。ということで、この曲は、記念すべき初のクリシェと思われる。
 

Tell Me Why 裏声NO.1

https://youtu.be/ESHdq9OJPT8?si=_w0KUVRiNV9V3H4E

 出だしのリンゴのドラムが際立つ。このフレーズなしにこの曲は成り立たない、そんなドラムをたたいている。曲の要所要所で何度も出てくる。この1つのフレーズで1曲通す。Devil in her Heartなんかでも見られるし、目立たないけどI'm Happy Just to Dance with Youもそうた。しかし、このワンフレーズの多用が、パターンの少なさとしてリンゴが貶められる原因かもしれない。このドラムはこの曲と、強く印象づけられるのだけど。
 それはともかく、何と言っても3声を堪能する曲である。イントロの後に3声がわっと聞こえてきて圧倒されてしまう。そして、展開部のジョンのパワフル裏声多重録音はなかなか他では聴けない。ビートルズ裏声NO1としたい。裏声はビートルズがよく使っているし、シャウトには特に多い。裏声で歌っている曲も他にあるし、もっと長々と歌ってるものもあるのだが、この曲の勢いが他のすべてをふっとばしてしまう。
 3人で歌っているようだが、ジョンの声しか聞こえない。この曲が何につながってるかといえば、Nowhere Manだ。この曲はNowhere Manの先駆けである。ジョンだけが歌ってるのかそうでないのか揉めてるところもおなじだ。
 この曲は、モノラルとステレオの音の差が大きく出ている。ステレオの方は、特にドラムの音がホールで演奏しているような響きをもって聞こえる。迫力があってよいと思うかカチッとした音が聞きたいと思うかは人それぞれ。

And I Love Her ポールの美しい曲初のオリジナル

 アルバムに1曲あるポールの美しいバラード。1stアルバムのTaste Of Honey、2ndのTill There Was Youと来てこの曲になる。この曲からポールのオリジナルになった記念すべき曲だ。楽器編成も、ジョージのガットギター、リンゴのボンゴと、Till There Was Youに引き続いて同じである。(クラベスというコンコン言う打楽器もはいってるが)
 ビートルズ聞き始めの、She Loves Youにも違和感のあったような時期からこの曲は普通に聞けたんだが、他の人はどうなんだろう。ビートルズに興味のない人にも受け入れられやすい曲だったりしないのだろうか。
 印象的なジョージのギターで、イントロのフレーズはジョージが考え出したらしいが、ソロになると何か下手に聞こえる。Till There Was Youであれだけ聞かせていたのに。スローなフレーズ、長く伸ばす音を聞かせるのは難しいのだろうか。エリック・クラプトンのアンプラグドのTears in Heavenのソロも下手に聞こえて同じ印象を受ける。ほんとにギター上手い人ならもっといい感じになるんじゃなかろうか。
 半音上がる劇的転調が使われている。ギターソロに入る時に半音上がり、おお?!ってなる。ゆっくりな曲なんで、ともすると短調な退屈な感じになるから良いスパイスだ。Things We Said Todayでも転調を使ってるし、この時期ポールは劇的転調に凝ってたようだ。
 バッキングのギターを弾けば分かるが、この曲は鳴らすのに力がかかるコード進行が続く。特に転調後はハードで、途中で握力がなくなってしまい最後まで弾き通すのが難しいと思うのだが、ジョンはどうだったのだろう。日本人とちがって、手も大きくて力も強いから平気なのだろうか?

I’m Happy Just To Dance With You ポールのベースを聴け!

 3rdアルバム4曲目。ジョージの定位置4曲目でジョージが歌う。1stアルバムではChains、2ndでは自作曲を4曲目で歌った。今回はジョンの曲。ジョンの曲を歌うのはDo You Want to Know A Secretに続いて2曲目だ。ジョージが3rdアルバムで歌うのは、この曲1つだけになっている。You Know What To Doというジョージの曲も試していたようだが、没になったのだろう。2ndで3曲も歌ってしまったからかもしれない。ただ、そのおかげで、このアルバムはカバー曲がないというだけでなく、レノン=マッカートニーの曲のみが収録されている唯一のものになった。収録曲数を減らし、既発表曲も収録し、そして、リンゴに歌わせず、ジョージの曲を没にしたことで達成された。
 ポールのギターがよく動き回ってる。ジョージの曲ではポールはめっちゃ張り切るというやつだが、それは、ジョンが作った曲であったしても当てはまるようだ。でも、モコモコした音なので、残念ながら後期のようによくは聞こえない。
 ジョンのギターは、ジャンジャカジャンジャカめっちゃ頑張っている。All My Lovingの三連リズムに続いて、この16ビート。ジョンのバッキングはすごいのだ。好きな女とすてきなダンスを踊ってるジョージのウキウキ感が出てる。やはりこの曲の聞き所はこのジョンのギターだろう。ポールのベースはよく聞こえないし。もちろん、ボン!ボン!と聞き慣れないタムタムもあるだが。
 なお、ジョンは、ジョージ向けの曲は作るが、リンゴ向けは作らない。当初は、Matchboxでも収録するつもりだったのかもしれないが、EPで発売されてしまい、リンゴは捨て置かれることになってしまった。

If I Fell ツインボーカルバラード

 特異な曲。ジョンとポールのハモリがきれいなバラードで、そのためThis Boys系とする話もあるが、これはジョージが入ってない2声なので、ツインボーカル系に入れておきたい。This Boy系と思ってしまうのは、ツインボーカルでも結構ハモっては来たが、ここまで凝りまくってハモリに振った曲はなかったし、何よりノリの良い元気な曲がほとんどで、ここまでのバラードがなかったからだ。とすれば、ツインボーカル系の新境地ということではないか。
 曲の構成をみれば、独立の導入部がある。Do You Want to Know A Secret以来だ。これは、他にもHelp!にあったりするのだが、ほぼほぼ短めのもので、この曲のようにたっぷり長めに聞かせるのは、他にないと思う。
 あとやっぱりジョージの12弦ギターがきれいだ。12弦のきれいな響きは、こういうバラードというかしっとりした曲で本領が発揮される。この曲でやっと本領が発揮されたということができる。とはいえ曲中に聞こえるのはミュートをかけた控えめな響きばかりなのだが、それで十分というかそれがよい。リンゴのドラムと同じく、ジョージのギターも歌を引き立てることに徹するのだ。そして、曲の最後を締めるフレーズは単純ながら最高だ。
 ステレオ版とモノラル版で結構違う。出だしのジョンの声を聞いてすぐ気づく。ステレオ版は迫力あるといえばあるが、ラフといえばラフ。このアルバム全般に言える。ステレオ版は、導入部のジョン声が2声になっていて、ズレてる部分があったり、ポールの声のかすれてる部分があったり。こういうのが嫌な人はモノラル版を聞こう。

I should have known better おかずなきリンゴ 

 なんというかアイドル全開の歌って感じだ。アイドルの曲だなあと感じたのはFrom Me To Youだが、あれはなんか媚び感があったのに対して、こっちはそんなふうには感じない。あちらが駆け出しのアイドルなら、こちらはもう成熟したアイドルだ。
 アルバムの構成的には、A Hard Day's NightからIf I Fellへの橋渡しになっていて、テンポもムードも両者の中間の曲。ノリノリの曲というわけでもなく、ゆっくりとしたムーディーなものでもない。ということで好きな曲ではなかったんだが、いつしかこれくらいのテンポの曲が好きになり、よく聴くようになってしまった。
 手数が少ないことで有名なリンゴだが、この曲は際立っていて、最初から最後まで淡々とおかず一ついれずたたき続ける。しかも最後はフェードアウトだから曲が消えるまでそのまんまだ。おかずがなく機械のように叩き続けるといえば、Tomorrow Never Knowsで、それの先駆けといってもいいが、あれはパワフルで誰もが注目する存在感のあるドラミングだ。淡々とエイトビートを刻むこちらの方は、仏道にでも入ったのか、もう悟りの境地に達したと言っていい。と思ったら、最初の歌いだしのところだけバスンとアクセントをつけている。こんなんわかるか?これ、オーバーダブしてるのだろうか。
 ジョージは展開部で、ギターをコードを押さえてジャラーン、ジャラーンと鳴らす。これもなかなかないフレーズ?だと思うが、And I Love Herでも同じことをやっている。レコーディングは同じ日にやってるようなので、アイデアの使いまわしだ。
 出だしのハーモニカ。ステレオ版では音が一瞬切れる。編集ミスらしく、そのまんま残したらしい。ステレオ版はモノラル版よりラフだが、このアルバムでは一層そう感じる。そのラフさがライブ感みたいなのを生んだりして、それがよかったりもするのだが。
 「恋する二人」という邦題で、Youと言って語りかけるような感じなんだが、会話になってるようでもない。今の僕の楽しい気持ちを告白していますという場面なのだろうか?ラブレターでも読み上げているのだろうか。上皇陛下が上皇后陛下に手紙を読まれたりしたが、そんな情景だろうか。