花火の火花

正しく考えるというのは難しい

I should have known better おかずなきリンゴ 

 なんというかアイドル全開の歌って感じだ。アイドルの曲だなあと感じたのはFrom Me To Youだが、あれはなんか媚び感があったのに対して、こっちはそんなふうには感じない。あちらが駆け出しのアイドルなら、こちらはもう成熟したアイドルだ。
 アルバムの構成的には、A Hard Day's NightからIf I Fellへの橋渡しになっていて、テンポもムードも両者の中間の曲。ノリノリの曲というわけでもなく、ゆっくりとしたムーディーなものでもない。ということで好きな曲ではなかったんだが、いつしかこれくらいのテンポの曲が好きになり、よく聴くようになってしまった。
 手数が少ないことで有名なリンゴだが、この曲は際立っていて、最初から最後まで淡々とおかず一ついれずたたき続ける。しかも最後はフェードアウトだから曲が消えるまでそのまんまだ。おかずがなく機械のように叩き続けるといえば、Tomorrow Never Knowsで、それの先駆けといってもいいが、あれはパワフルで誰もが注目する存在感のあるドラミングだ。淡々とエイトビートを刻むこちらの方は、仏道にでも入ったのか、もう悟りの境地に達したと言っていい。と思ったら、最初の歌いだしのところだけバスンとアクセントをつけている。こんなんわかるか?これ、オーバーダブしてるのだろうか。
 ジョージは展開部で、ギターをコードを押さえてジャラーン、ジャラーンと鳴らす。これもなかなかないフレーズ?だと思うが、And I Love Herでも同じことをやっている。レコーディングは同じ日にやってるようなので、アイデアの使いまわしだ。
 出だしのハーモニカ。ステレオ版では音が一瞬切れる。編集ミスらしく、そのまんま残したらしい。ステレオ版はモノラル版よりラフだが、このアルバムでは一層そう感じる。そのラフさがライブ感みたいなのを生んだりして、それがよかったりもするのだが。
 「恋する二人」という邦題で、Youと言って語りかけるような感じなんだが、会話になってるようでもない。今の僕の楽しい気持ちを告白していますという場面なのだろうか?ラブレターでも読み上げているのだろうか。上皇陛下が上皇后陛下に手紙を読まれたりしたが、そんな情景だろうか。

A Hard Day's Night 丸太みたいに眠る

 シングルでもあるが、サード・アルバムのタイトル曲にして、1曲目。出だしのジャーン!という印象的な音から始まる。アルバ厶の出だしは印象的に始めるのが常で、ファーストではカウント、セカンドではイントロなしのサビ始まりだった。3枚目は、この曲のこの出だしを持ってくるしかなかろうという感じだ。
 サウンドは、この時期の代表的なもので、12弦ギター、リンゴのバスドラのパターン、カウベル、ボンゴとそろっている。12弦ギターは、You can't Do That、I Call Your Nameと続いて、3曲目になろうか。やっと12弦のキラキラ音が曲を彩るようになった。特に最後のアルペジオがきれいだが、曲を通してキラキラさせている。ストレートな激しめのロックなのに綺羅びやかなのは、このギターがあるからだろう。ジョンの弾くアコースティックギターも12弦ぽいのだが、ちがうのだろうか。
 ボーカルは分け合っていて、サビをポールが歌っている。高音だからということらしい。Any Time at Allもワンフレーズだけだが高音なのでポールが歌ってる。他はといえば、例えば、WaitとかA Day in the Life、I've Got A Feelingは、自分が作ったパートということで各々が歌っているんだろう。高音だからということで、1つのセクションまるまるというのは特異だ。でも、そのおかげというか、ジョンがポールの歌い終わりのところに「う~ん」と被せて入ってくる部分はこの曲の一番エモい部分だ。
 ところで、この曲の訳詞でよく目にする「丸太みたいに眠る(sleep like a log)」だが、日本語的には「泥のように眠る」ではないか?「丸太のように眠る」とか言うか?聞いたことがないし言ったこともない。
 そして、邦題「ビートルズがやって来るヤア!ヤア!ヤア!」だが、他には無いセンスだ。映画のタイトルがまずあって、そこからそのまま曲に持ってきたのだろうか。曲との関連は全く感じられない。ある意味一番印象的な邦題だ。今ではなくなってしまったが、ぜひ残しておいてほしかった。
 それにしても、いつまでも飽きない曲だ。

Matchbox リンゴはじまった

 リンゴが歌う曲渋い曲。最初はまあ捨て曲的な感じだったが、聞いてるうちにハマってきて好きになった。渋めの曲にありがちなことである。リンゴの声と、最後にピアノが入ってきてノリを出すのが気に入ってしまった。
 ビートルズのリンゴはこの曲から始まったと言っていい。これまでのBoysもI Wanna Be Your manも、ストレートな激しいロックで、ドラムを叩きながら大きな声を出し、吠えたりしていた。この曲ではそんな大声は出さず、間延びした歌い方になっている。オリジナルのカール・パーキンスはそんな歌い方してないので、これがリンゴの素の歌い方なのだ。そして、リズム。この曲は、シャッフル系の曲なのだが、この曲以降、リンゴが歌う曲はこのリズムばかりになる(自作曲を歌うまで)。Yellow Submarineに代表される、のほほんとしたリンゴまでもうすぐだ。
 そして、この曲を特徴づける音作りといえば、ズレだ。ボーカルもギターも2つは重ねてると思うが、両方ともずらして歌ったり弾いたりしている。ボーカルのズレ、ルーズさが、いい味出してて、のほほんリンゴへ近づけている。ズレを楽しもう。
 この時期のリンゴボーカルの曲はこの曲くらいだ。サード・アルバムが13曲に終わったのは、リンゴの歌がなかったからかもしれない。リンゴが歌わないなら、別の人間が歌うのではなく、席ごとなくしてしまえという感じか。4人の友情が垣間見える。

Slow Down 初期ジョージのソロ完成

 ジョンのアオ!っていう高音シャウト、というか金切り声が聞ける、ストレートな激しめロックンロールカバー曲。金切り声が聞けるのはこの曲くらいではないかと思う。
 この曲は何と言っても出だしのピアノだ。この曲をど迫力にしている。オリジナルの曲にもピアノを使っているのだが、こんな存在感は感じられない。ジョージ・マーティンの素晴らしい仕事だ。ピアノメインの曲になってしまったかのようだ。それこそ、ロング・トール・サリーのリトル・リチャードのように、ピアノを弾きながら歌うスタイルを感じさせるまでになっている。ビートルズの曲で言えば、Little Childが同じような感じだ。その系譜にある曲としておこう。ちなみに、ビートルズのロング・トール・サリーの方は、この曲に比べれば、そこまでピアノを感じない。
 そして、ジョージのギターソロだが、大変素晴らしい域に達してる。BoysからI Wanna Be Your manへ続く、激しめの曲に付けられた系のソロの完成形である。サード・アルバムには激しめの曲でのソロはない。4枚目になるとジョージはギターの奏法を変えてしまっているし、その後も、ストレートな激しいロックンロールはやらなくなるので、初期ロックンロール・ソロの聴き納めである。このEP版4曲のソロは、どの曲もキマってると思う。
 この曲のソロの部分は、原曲ではサックスで奏でられていたりする。ロング・トール・サリーもボーイズもそうだ。そういったソロをジョージはギターで弾いているのだが、初期ジョージのソロのフレーズは、こういったサックスの奏法の影響を受けたものなのかもしれない。

I Call Your Name 12弦のソロを味わう

 You Can't Do Thatに続いて、ジョージ12弦ギターのイントロで始まる、Long Tall SallyのEPに収録された曲。You Can't Do That程の不穏さはなく、ようやっと12弦の響きのきれいさを味わえるようになってきた。You Can't Do Thatあたりから始まっているこの時期の特徴がよくでている。ジョージの12弦。カウベルがコンコンなっている。リンゴのバスドラが、ドドッドドン、とこの時期のバスドラになっている。などなど。ボンゴポコポコはないけいれど。
 この曲では、ジョンではなく、12弦のジョージがソロを弾いている。12弦初のソロではないか。このソロの部分では、リズムが変わり、ジョンが裏のリズムを取り始める。スカであるとよく指摘される。が、それよりも、ジョージのソロだ。チョーキングしてるんじゃないか?12弦で。なかなか無茶をすると思う。スカより12弦のチョーキングの方が事件だと思う。このソロは多分ビートルズの12弦での一番長いソロなのでしっかり味わいたい。
 イントロは、ステレオ版とモノラル版で違うフレーズになっている。珍しくステレオの方が、メロディとしてはちゃんとしてると思う。ビートルズは、モノラルミックスの方に力を入れ作ってたらしいのだが、これについては、ステレオの方が良いと思う。なんでこうなったのだろう。
 もう一点不思議な点は、この曲をアルバムに入れたら、全曲オリジナルで14曲そろったはずなのに、Can't Buy Me LoveもそのB面も収録されたのに、何故かこの曲は外されている。なんでだろう。EPはアルバムという解釈だったのだろうか。

Long Tall Sally 貴重な曲だ

 出だしのポールのシャウトがとてつもない。最初のラブミードゥーの時の緊張した声とは大ちがいだ。知らずにボリュームを上げたままこの曲をスタートさせてしまったら心臓が跳び出るくらい驚いてしまうはずだ。そんな人を見たことがある。心臓の弱い人には聞かせてはいけない。ジョンがツイスト・アンド・シャウトなら、ポールはこの曲だ。二人もこんなパワフルボーカルがいるビートルズってほんとすごい。そして、ツイスト・アンド・シャウトと同じく、オリジナルをちょっと変えて、さらにパワーアップした出来にしている。そして、その部分がたいへんに貴重なのだ。
 1つはギターソロだ。オリジナルではブラスが活躍するが、ビートルズではギターになる。で、オリジナルとちがって、ソロは2度ある。ジョンもソロを弾く。You Can't Do Thatと同じく、コードをジャラジャラ鳴らして、弦を2本押さえてチョーキングして、汚い音を出す。一方、ジョージのギターといえば、初期ジョージの激しい系のソロのベストプレイだと思う。音階を上げていく部分はかなり盛り上がる。ジョンとジョージが順番にソロを弾いて、ソロのバトル?的になってるのは、この曲くらいだと思う。ポールも含めて三人ならThe Endでやってるが、それまで待たないといけない。
 そして、エンディング部分のリンゴのドラムだ。この部分もオリジナルとは異なり2回繰り返している。このビートルズの演奏に比べればオリジナルはかなりあっさり終わっているように聞こえる。この最後の部分をオリジナルの100倍、狂ったように盛り上げるのが、リンゴの無茶苦茶に叩きまくるドラムだ。これとポールの叫びが相まって異様な盛り上がりを見せる。このドラムかなりすごいと思うんだが、なんか全然評価されてない気がする。リンゴは過小評価されているとよく言われ、その原因として手数が少ないというのがあるように思うが、叩こうと思えばいくらでも叩けるぜというのがこれでわかる。レインがベストドラムと言われたりしてるが、やっぱりこっちの方だと思う。(あれはテープスピードを落としているためゆっくりになっているが、最近は元のスピードで聞けるようになっている。元のスピードで聞いてもロングトールサリーの方がすごい。)
 サード・アルバム向けに録ったらしいが全曲オリジナルでいくことになって、EP版での発売になったようだ。何にせよ、ギターバトルもリンゴドラムもこの曲でしか聞けない。貴重な曲だ。カバー曲だしアルバムにも入ってないからか、不当に見損なわれてしまってるんじゃないだろうか。

You Can't Do That 不穏な12弦ギター

 Can't Buy Me LoveのB面で、これもサードアルバムに入っている。A面の曲は映画に使われていたが、これは使われていない。それなのに収録されている。セカンドアルバムで始まった、シングル曲とアルバム収録曲を切り離しは、間断なしというわけではなく、基本1回おきになっているようだ。サードアルバムは映画のサントラだし、タイトル曲A Hard Day's Nightをシングルで出さないのも変だしということで、シングル曲をアルバムに収録することになったとして、そうなったらもうシングルB面も入れて全曲オリジナルにしてしまえということになったのだろうか。基本自然な流れだと思う。
 ジョージの12弦ギター初登場である。この時期のビートルズの特徴である12弦ギターは、2つの弦を一緒に鳴らす。1オクターブ高い弦が張られていたりして、普通に弾けばキラキラしたきれいな音になるのだが、この曲の出だしはマイナー調、むしろ不穏な響きになっている。そして旋律もまた不穏である。12弦の初お目見えで不気味な音感を響かせるというのもなんとも言えない。
 ジョンがギターソロを弾くのも初登場だろうか。ジョージが12弦で変なフレーズを弾き続けるので、ソロはジョンが引き受けることになったのだろうか。ジョンのソロは極めてラフだ。コードをかき鳴らし、2本の弦を抑えてチョーキングしてゆがんだ音を出す。かっこいい。ジョンのソロは、次のロングトールサリーでも弾いてるが、そこでもコードをかき鳴らす同趣向のものとなっていて、ジョンの色がでている。
 A面の曲では消してしまったコーラスだが、この曲では素晴らしい効果を上げている。追っかけコーラスと迄言えなくても、コーラスがメインとなって歌詞をぶっ込んでくる場面もあるし、ギータソロのところでの存在感は素晴らしい。こういうのはビートルズならではという感じだ。
 カウベルも初登場ではないか。カンカン4拍子を打ってる。そして、ボンゴの16拍子がポコポコなっている。A Hard Day's Nightでも出てくる2つだが、その先駆けだ。特にカウベルは、女に詰め寄ってる感が迫ってる。この時期の彼ら流行りの打楽器である。
 不穏であるということを除けば、Can’t  Buy Me Loveよりもこの時期のビートルズサウンドをよく表している。このころはジョンの曲が多いから自然とそうなるのかもしれないが。
 この曲とCan't Buy Me Loveは、ドイツ語の2曲と同時期に作ってたのだが、この音作りをみると、もうあの2曲は完全に過去のものになっていたような感じだ。ビートルズはどんどん先へ進んでいたのだ。