ynkby's blog

正しく考えるというのは難しい

ことば

日本人と幸福

幸福とは何だろうか。 アリストテレスにとって、それは、究極目的であり、生涯にわたって人としてよく生きることである。人としてよく生きるとは、動物にも植物にもない、人固有のものである理性にしたがって適切な活動をすることである。そのためには、知性…

なぜ日本人は風呂に石鹸をいれないのか 

折口信夫全集 (20) 民族史観における他界観念・神道宗教化の意義―神道・国学論 作者: 折口信夫 出版社/メーカー: 中央公論社 発売日: 1996/10 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 斎川とは、沐浴の川である。「ゆかわ」と読むらしい。「ゆ」とは、…

バッハの自己満足

バッハの生涯と芸術 (岩波文庫) 作者: J.N.フォルケル,柴田治三郎 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1988/01/18 メディア: 文庫 クリック: 14回 この商品を含むブログ (4件) を見る 「自己満足にすぎない」とかいう。主に非難する場面で。ある人のために何…

「旧土人」の意味

「土人」の意味は、土着の人であったり、未開人・野蛮人であったりする。では、「旧土人」とはどういう意味か。まず「旧」から考えよう。昔は土人だったが、今はそうではない人という意味だろうか。「旧法」が「今は使ってない昔の法」であるように。それと…

土人の無常

むかつく人間に「土人!」と罵声を浴びせかけたりするシーンがあったりするが、「土人」とはどういう意味か。未開人・野蛮人といった感じで使われるが、もともとはその土地の人という意味だった。「〇〇地方の土人」というと、〇〇地方に住んでいる土地の人…

オスプレイは不時着したのか墜落したのか

ちゃんと定義して、定義通りに使っているなら、どっちでもいい。 しかし、オスプレイ配備の可否の根拠とするためにやっているのなら、つまり、不時着なら配備可能になり、墜落したから配備不可になるというためなら、不毛である。 墜落とか不時着の定義には…

言葉狩りをするものは言葉を饅頭と考えているのか

ソシュールの思想 作者: 丸山圭三郎 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1981/07/15 メディア: 単行本 購入: 4人 クリック: 36回 この商品を含むブログ (19件) を見る 箱の中に、饅頭が詰まっているとする。饅頭を一つ取り去ると、そこに饅頭のない隙間がで…

寛容と和は、どうちがうのか

和の思想 異質のものを共存させる力 (中公新書) 作者: 長谷川櫂 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2014/07/11 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 日本の建築を見ると、西洋型の家に、畳とかが違和感なくなじんでいたりする。こういうのが…

KARAは愛する文化 『大王から天皇へ』

大王から天皇へ 日本の歴史03 (講談社学術文庫) 作者: 熊谷公男 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2008/12/10 メディア: 文庫 クリック: 5回 この商品を含むブログ (11件) を見る 本書は、4世紀から7世紀にかけての日本の歴史を描く。ヤマト朝廷は、5世紀末…

よいとかよくないとかはややこしい

日本の植民地支配はよかった、というとボコボコにされるのか。 よいとかよくないとか言うには、その判定の基準点が必要だ。 例えば、他の西洋列強のやっていた植民地支配とか、あるいは道徳とか。道徳にも色々あって、劣った民族に文明をもたらす義務がある…

なぜ日本は日露戦争後ダメになったのか 『幕末史』

幕末史 ちくま新書 作者: 佐々木克 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2014/11/21 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (1件) を見る 攘夷とは何か。 幕末期、攘夷というタームは様々な意味で使われたという。排外行動。つまり外国人を切り捨てたりす…

理解が妨げるもの

宗教学者が鸚鵡真理教を理解したいと言ったら、理解したいとは何事か!と非難されたとすると、理解の意味に齟齬が生じているのかもしれない。 理解には、単に知る、ということだけでなく、共感するとか賛同するとかいう意味合いまで含まれる。鸚鵡真理教を理…

クラリスのことば 『驚くべき日本語』

驚くべき日本語 (知のトレッキング叢書) 作者: ロジャー・パルバース,早川敦子 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル 発売日: 2014/01/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (4件) を見る 日本語は世界語になるんじゃないか、と…

なぜ日本人は新しいものがいいのか 『古事記誕生』

古事記誕生 (中公新書) 作者: 工藤隆 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2012/03/23 メディア: 新書 この商品を含むブログ (4件) を見る 本書は、新しい日本像を求めて、古事記の神話を研究する。日本は、西洋的あるいは中国的な合理主義的思考をする文…

ジャパニーズ・ドリームを待望する

ジャパニーズドリームという言葉をたまに聞く。アメリカンドリームのまねだろうが、この言葉、アメリカンドリームと同じように使えるのか。 中根千枝でお馴染みのタテ社会とヨコ社会の区別を考える。ヨコ社会とは、階級社会のことで、同じ階級との関係は強い…

「支那」はもともと差別語でなかったから使っていいのか

差別的な意味合いを持つ言葉が差別語で、そういった差別語は使ってはならないとすると、「支那」はもともと差別語ではなかったから使っていい、ということはできない。 まず、「支那」は差別語ではない、とはいえない。 言葉の意味はいろいろ変わる。 最初は…

なぜ「おさわがせして申し訳ない」というのか 『クレーム対応の基本がしっかり身につく本』

[ポイント図解]クレーム対応の基本がしっかり身につく本 (中経出版) 作者: 舟橋孝之 出版社/メーカー: KADOKAWA / 中経出版 発売日: 2014/04/10 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 「クレーム」を定義してないのが気になるが、気分を害してい…

日本語は和の精神に合う言葉 『日本語と外国語』

日本語と外国語 (岩波新書) 作者: 鈴木孝夫 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1990/01/22 メディア: 新書 購入: 3人 クリック: 12回 この商品を含むブログ (30件) を見る 議論をするとき、日本語より英語でしゃべる方が明解になるという感覚を持つ人がいる…

なぜあそびが大事といくら言っても説得力がないのか 『古事記の宇宙』

古事記の宇宙(コスモス)―神と自然 (中公新書)作者: 千田稔出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2013/03/22メディア: 新書この商品を含むブログ (2件) を見る あそびについての評価は分かれている。まじめだけではだめで、潜在力を最大限発揮するには、例え…

嘘をつかない嘘 『言語学の教室』

言語学の教室 哲学者と学ぶ認知言語学 (中公新書)作者: 野矢茂樹,西村義樹出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2013/06/24メディア: 新書この商品を含むブログ (9件) を見る 新聞・雑誌が事件を伝えるとき、ある情報を書かなかったため、大きく印象がかわ…

私心の概念 『心を高める、経営を伸ばす』

心を高める、経営を伸ばす (PHP文庫)作者: 稲盛和夫出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2010/08/06メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る 稲盛和夫の処女作だ。初版は89年だが、言っている中身は現在インタヴューとかに応えているものと変わらな…

差別語の何に不快になるのか 『差別表現の検証』

差別表現の検証―マスメディアの現場から作者: 西尾秀和出版社/メーカー: 講談社発売日: 2001/02メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (2件) を見る 本書は、メディアの差別表現への対応状況についてどうあるべきか、そして、個々の表現につい…

「たらちね」は垂れ乳ではない 『古代日本の月信仰と再生思想』

[asin:486182205X:detail] 本書は、元来日本にあったのは太陽信仰ではなく月信仰だとし、日本の神話や文化を太陽信仰の観点から解釈しようとする者を太陽信仰至上主義と言って切って捨てる。 もともと海洋民族だったことからしても太陽よりも月なのだ。海の…

「自然」と「天然」をもっとうまく使いこなそう 『翻訳語成立事情』

翻訳語成立事情 (岩波新書 黄版 189)作者: 柳父章出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1982/04/20メディア: 新書購入: 16人 クリック: 66回この商品を含むブログ (49件) を見る 本書は、翻訳語が織りなす悲喜劇を描く。「個人」、「社会」、「権利」など合計10…

「宇多田ヒカル」を考える:秋葉原と宇多田

秋葉原は「アキバ」と呼ばれるが、これは、「原」を省略し前2文字の「秋葉」を「アキバ」と呼んでいるのだろうか、それとも「アキハバラ」の1文字目と2文字目と4文字目をとっているのだろうか。 正解は知らないが、秋葉原はもともと「秋葉ヶ原」(アキバ…

体罰問題紛糾の原因 体罰の定義とその無用性

体罰の是非が問われているが、「体罰」という言葉の理解の相違が無用の混乱を招く一因になっているので、この言葉の定義について考えたい。結論は、体罰の是非を検討するには、むしろこの言葉は使わない方がよいというものだ。 まず、ここでいう体罰を、教師…

なぜ日本人は市場原理を嫌うのか 『福翁自伝』

新訂 福翁自伝 (岩波文庫)作者: 福沢諭吉,富田正文出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1978/10メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 95回この商品を含むブログ (120件) を見る 日本には反資本主義の精神が底流している。とするならば何が原因か、という問題であ…

「女子」の意味 『婦人・女性・おんな』

婦人・女性・おんな―女性史の問い (岩波新書)作者: 鹿野政直出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1989/02/20メディア: 新書この商品を含むブログ (1件) を見る 本書は、女性史を描くとともに、女性史という分野がどうあるべきかを考える。政治運動の歴史をメイ…

バイリンガルはどのように考えるのか 『ことばと思考』

ことばと思考 (岩波新書)作者: 今井むつみ出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2010/10/21メディア: 新書購入: 22人 クリック: 114回この商品を含むブログ (40件) を見る ものを考えるとき、言葉で考えている。ということは、言葉がかわれば思考も変わるのか。…

反原発でない者はエコノミックアニマルか 『「エコノミックアニマル」は褒め言葉だった』

「エコノミック・アニマル」は褒め言葉だった―誤解と誤訳の近現代史 (新潮新書)(2004/09)多賀 敏行商品詳細を見る経済活動ばかりに明け暮れる日本人を揶揄する言葉に「エコノミック・アニマル」がある。 原発事故があったのに原発に反対しないなんて未だに日…