ynkby's blog

正しく考えるというのは難しい

昔から席は譲らない 『戦中派焼け跡日記』

 

戦中派焼け跡日記―昭和21年

戦中派焼け跡日記―昭和21年

 

  本書は、昭和21年の元旦から年末まで一年間の日記であって、当時の生の声がきける。敗戦直後の当時東京の学生だった筆者の生活や思いが垣間見える。

 人間宣言が出て、臣民から国民に新聞の記述が変わった年であるが、筆者は、何よりも敗戦という事実を悔しがっている。アメリカは日本を四等国にしようとしているとして、このやろうと思ている。中でも、ソ連への憎しみが強い。アメリカはちゃんと戦った相手だから、戦勝国として色々やらかすのはまあいいだろう。しかし、ソ連は、日本がやられてから、火事場泥棒のようにやってきてかっさらっていったのであって、こんなのを許すことはできないと。満州から引き揚げてきた人もソ連軍の素行のひどさにげんなりしている。
 ともかく、今にみておれと捲土重来を期している。米軍によって書かれた新憲法に際しても、日本は再び武器を取ることになるだろうと考えている。

 そんな筆者は、故郷・山陰と東京を何度か鉄道で行き来している。あふれかえる満員状態で、デッキにも人が溢れでている。当時の日本人は今より荒っぽかったから、列車の中も結構な喧噪状態になている。席を譲れとか、デッキにあふれ出てる人に向かって寒いから扉を閉めろとか。そんな中、席に座っている人は、狸寝入りで無視している。

 電車で席を譲らない日本人が話題になったりするが、別に最近の日本人が無礼になったわけでも薄情になったわけでもない。昔から日本人はそうだったのだ。