ynkby's blog

正しく考えるというのは難しい

ルパン三世が人気あるのは 『出発点〔1979~1996〕』

出発点―1979~1996

出発点―1979~1996

 

本書は、宮崎駿がいろんなところに書いた文章や対談がたくさん載っている。宮崎駿研究者には必携の書にちがいない。

 

宮崎駿は、反戦で9条改正するなと言ったりする一方、軍用機が大好きだ。ジブリというのも軍用機の名前からきてる。基本的に機械が好きなようだ。しかし、機械ならなんでも、というわけでもなさそうだ。

 

ラピュタの企画書が載っていた。そこに書かれていたラピュタの舞台設定は、機械がまだ機械の楽しさをもつ時代、科学が必ずしも人間を不幸にするとは定まっていない頃、というものであった。これが宮崎駿の好みの核を表しているのではないか。楽しい機械。例えば、電子制御とかされておらず、おれがダイレクトに操ってるぜ感のある機械が好きなのではなかろうか。

 

2CV好きなのもそれかもしれない。宮崎駿は2CVが大好きだ。2CVとは昔のクルマで、2馬力という意味だ。映画をみてたらこれが出てきて、欲しいと思ったから買ったらしい。薄いベニヤ板でできてるような感じで、スピードを出すと同乗者が死の恐怖を味わったようだ。やっぱりまともなクルマに乗ろうとノークラッチのクルマを買ったのだが、それでも乗り続けてしまっているという。楽しい機械なのにちがいない。

 

2CVへの思い入れは強く、二馬力という宮崎駿の会社の名前はこのクルマからとってるし、カリオストロでもクラリスに運転させている。

 

ところで、カリオストロの城は、もちろんルパン三世のシリーズの一つで、原作はモンキーパンチだ。でも、原作が別とはいえ、自分と関係のないところで作られた作品を映画にしたというものでもない。ルパン三世にはテレビシリーズで作成に関わっていた。1971年に放送が始まるルパンの第一部だ。この作品、当初は別の人が作っていたのだが、人気が全く出ず、途中から突然宮崎駿が作ることになった。その時、宮崎駿は設定を変えたという。

 

当初は、大人向けのアニメとして企画され、その時代を反映したシラケのルパンであった。莫大な財産を相続しアンニュイを紛らすために泥棒する。宮崎駿はそんなのが嫌いだったようで、キャラ設定を変え、シラケを払拭した。知恵と体術だけで目的を追うルパン、気のいい朗らかな次元、アナクロ滑稽男の五右衛門、安っぽい色気は売り物にしない不二子という感じだ。

 

現在ルパンは国民的人気を得ている。ひょっとしたら宮崎駿が関わった作品の中で一番かもしれない。続編が山のように作られ、声優が代わっても未だ現役で、サザエさんやドラえもんのようだ。それはこのキャラ設定に負うところが大きかろう。アンニュイで暇つぶしに泥棒してるだけでは国民的支持は得られまい。このキャラ設定だから時代を超えられたのだ。このキャラ設定をしたのは宮崎駿だ。だからルパンを国民的人気にしたのは宮崎駿だ。