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正しく考えるというのは難しい

妻の地位が上がって離婚は減り、女性の地位が上がって離婚は増えた 『武家の女性』

武家の女性 (岩波文庫 青 162-1)

武家の女性 (岩波文庫 青 162-1)

 

江戸時代の特に下級武士の生活が書かれている。筆者は婦人運動家として有名で、結婚したのは社会主義者の山川均だ。明治生まれだが母親が武士階級だった。貧乏で内職して生活してきた下級武士の女性は、維新後教師になったりした一方、働かなくてもよかった上級武士の女性は芸娼妓になる者が多かったと言って、下級武士が指導的な役割を演じたことを誇っていたりする。

 

結婚と離婚は、江戸時代は結構多かったという。離婚などすごい恥とされていたにもかかわらずだ。原因として死別が多かったことが挙げられているが、もう一つは、妻の地位が低かったことだ。儒教の七去三従の教えがあったりして、結構簡単に離婚させることができたのだ。姑が5回嫁を取り換えた親戚が2件あったらしい。それが、明治に入り、民法ができて、本人の同意なしに離婚させることができなくなり、離婚率はグッと減ったのだという。

 

さて、平成の現在、再び離婚が注目されている。成田離婚とか熟年離婚とか。他にも何かあったかもしれない。江戸時代に先祖返りしたのだろうか。

 

妻の地位が低ければ、離婚は増えやすかろう。簡単に三行半を突き付けることができれば離婚への障害は減るから。簡単にできないなら離婚は減る。

 

しかし、今、離婚が増えているのは、女性の地位が上がったからだろう。一人でも生活していけるからだ。女性の地位が低いと結婚しないとどうにもならない。生きていけないから。一人でやっていけるなら、離婚に対する障害は低くなる。

 

つまり、江戸時代は、女性の地位が低く、妻の地位も低かったので、離婚も再婚も多かった。それが明治に民法が制定されて、妻の地位が上がったので離婚は減った。そして現在、女性の地位も上がったので離婚が増えた。

 

未婚率が増えたとか、離婚率が増えたとかが問題視されているが、減らしたいのなら、ちゃんとインセンティブ面から考えるべきだろう。男性か女性のどちらかの地位を下げれば結婚は増えるだろう。生きていけないから。その上で流動性を重視するなら、夫か妻の地位を下げればいい。離婚が増えて流動性が増すだろう。江戸時代化である。安定性を重視するなら逆に地位を上げればいいということになる。明治時代化である。