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正しく考えるというのは難しい

男尊女卑の起源は仏教 『神道とは何か』

 

神道とは何か - 神と仏の日本史 (中公新書)

神道とは何か - 神と仏の日本史 (中公新書)

 

 神道は、大昔の自然崇拝から、仏教が入ってきて神仏習合が起こり、明治維新ごろに廃仏毀釈が起こって仏教と分離し、その後、神道の固有性を探るようになった。

日本独自の道徳性を表すものとして再構成されたりもしたが、そもそもは素朴な多神教的自然崇拝でしかなかったのであって、そういった内面性への関心は仏教の影響で生じたものであったりするという。それなりの歴史を経て現在に至る神道なるものは、仏教の影響を排除すると、全くピンとこないものになってしまう。仏教なしには語れない。

本書が主に扱うのは、神仏習合期だ。仏教の影響は強い。例えば、それまで神様には国の繁栄を祈願するだけだったのが、個人的願望の成就祈願がされるようになった。仏による救済という思想のもと、神と仏がないまぜになったからだ。

仏教が日本に入ってくると、まず、蘇我馬子が、仏殿を作り、仏像にお仕えするために3人の女を出家させた。これが、日本で最初の出家者だ。なぜ最初の出家者が女なのかというと、神に使える巫女といった感覚からじゃないかという。

出家者、それも記念すべき最初の出家者が女であるというのは、仏教的には、かなりおかしいようだ。そもそも仏教は女性罪業論をとっており、非常に女性に厳しい。釈迦は、養母の出家を一度拒否している。戒律も、女性の方が多い。挙句には、女は男に生まれ変わらないと成仏できないと、女の成仏を否定している。

蘇我氏が女を出家させたのは、仏教のことがまだよくわかっていなかったからにちがいない。時代が進むと、日本でも女性の地位は低下した。仏教の理解が進んだからにちがいない。神社での女性の役割は限定されていき、完全に排斥される儀式も出てきた。そして、天照大御神は実は男神であるという説が登場するに至る。天皇祖神が業の深い女であることはよろしくないと考えられたからだという。

男尊女卑といえば、儒教残滓と考えられているような気がするが、むしろ、日本においては、仏教が原因であるにちがいない。社会一般への浸透度、影響度においては、仏教の方が、儒教よりずっと上だろう。日本は仏教国と言われていたし。なんでもかんでも儒教のせいにしてはいけない。